約束の旅(Traveler 2015/08)
やっと20年前の約束をはたすことができた。
義兄は出合ったときから腎臓病で、ずっと人工透析を続けている。何度も危ないことがあったが、何度目 かの危篤となった時に、不意に旅行く約束を思い出した。幸い持ち直してくれたので、義兄、義父母、家 内、娘、私の六人で一泊二日の旅行をすることにした。
義兄が選んだ宿は、渓谷沿いの洒落た旅館。魅力的な宿だが、歩くことができない病人や老人向きではない。義兄に聞くと、腎臓病の友の会が利用した宿で、義兄は入院中で参加できなかった。だから、一度泊 まってみたかったそうだ。
楽しみにしていた食事は、急な階段を降りた一つ下の階だと判明。エレベータもないので、宿に事情を話 し部屋で食事をしたいと頼んだところ、提案されたのは、部屋の前から車で移動するというもの。その心 遣いに感謝し、私だけなら1分で移動できる距離を20分かけて移動した。
たどり着くと、床に座れない義兄と義母を気遣い椅子を用意してあった。お膳もそれに合わせて重ねられ ている。やっと、それぞれの席に収まった時には、ある種達成感があり笑顔までこぼれた。食事制限され ている義兄も、あまり食事をしない義父母も満足そうに食べ終えた。